特別な支援が必要な児童生徒8.8% 学校全体で取り組むには

特別な支援が必要な児童生徒8.8% 学校全体で取り組むには
通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について、意見を交わした検討会議(YouTubeで取材)
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 文科省の「通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議」は12月16日、第6回会合をオンラインで開いた。12月13日に公表された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の結果で、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒は、小中学校では8.8%、高校では2.2%だったことや、現状の支援状況について、委員からは「担任が抱え込んでしまいがちで、校内全体の支援につなげられていない」「通常の学級にこれだけ支援が必要な子どもがいることを前提として、学級経営や授業づくりをする必要がある」などの意見が出された。

 野口晃菜委員(UNIVA理事)は同調査結果について、「今のままでは支援が足りていないという先生たちのSOSではないか。ニーズは認識しているけれども、そこに対してどうしたらいいか分からない、手だてに困っているという状況が見えてくる」と分析。

 今後の施策として、「通常の学級にこれだけ支援が必要な子どもがいるということを前提として学級経営や授業づくりをすること、そしてそれでも困難さがある子に対しては個別的な支援を検討するという2段階のプロセスが重要だ」と指摘した。

 「今は『通常の学級で困難さがある=個別的支援が必要』となってしまっているが、通常の学級でもできる工夫はたくさんある。ある自治体では、自由進度学習の方式で授業をしたところ、それまで個別的支援が必要とされていた子も問題なく授業に参加できたといった事例もある。こうした事例を通常の学級の先生たちが知ることがとても大切ではないか」と述べた。

 奥住秀之委員(東京学芸大学教育学部特別支援科学講座教授・学長補佐)は「どうしてもまだ担任が抱え込んでしまいがちで、それを校内全体につなげるところが十分ではない」と調査結果について見解を示した。「担任の工夫でいいのか、通級での指導につなげていくのか、困っている子どもたちがどのレベルの支援が必要なのかを校内全体で把握し、多様な水準の選択肢を用意して検討していく必要がある」とした。

 続いて、学校教育法施行令第22条の3の障害の程度に該当する児童生徒に対する通常の学級での支援についても検討された。2019年度の小学校・特別支援学校就学予定者(新第1学年)のうち、該当すると判断されたのは1万887人だった。そのうち、公立特別支援学校に8003人(73.5%)が、公立小学校に2835人(26.0%)が就学している。

 こうした現状に対して、野口委員は自身が関わっている知的障害のある子どもの通級のモデル事業について報告。これまで1年半ほど取り組む中で、知的障害のある当事者の子どもはできるようになったことが増え、教員はユニバーサルな学級経営や授業づくりという観点で工夫が増えてきているという。

 「ポイントは、学校全体で取り組むこと。校内研修でインクルーシブ教育などを扱ったり、通級の教員が通常の学級に柔軟に入り込んだりして支援をしてきた。子どもたちを取り出して通級で教えるだけでなく、その子の日常生活の場である通常の学級に通級の教員が柔軟に行き来できることは非常に大きかった。それにより一貫性が保たれて、かつ役割分担ができる」と話した。

 また、該当児童生徒の通常の学級での支援を実現していくには、特別支援学校と今より密にチームとして連携できることが理想的だとし、「今も特別支援学校がセンター的機能を果たしているが、なにか頼みたいと思っても物理的に離れているから頼みづらい状況がある。例えば、高校と特別支援学校が施設を共有している兵庫県の阪神昆陽のような実践が参考になるのではないか」と提案した。

 続いて、笹森洋樹委員(国立特別支援教育総合研究所発達障害教育推進センター上席総括研究員兼センター長)は「特別支援教育コーディネーターの専門性の向上が、該当する子どもたちの支援のポイントになってくるだろう。また、例えば特別支援学校の教員が地域の学校を巡回するなど、サポートに回れることが可能になればいいのではないか」と述べた。

 中田寛委員(鳥取県教育委員会教育次長)は学校現場で感じることとして、「困難のある子どもがいたときに、すぐに特別支援学級につなげる傾向が強くなっている。インクルーシブ教育の考え方とは逆行するようなことが起こっている」と指摘。合わせて、「通級の待機児童も出てきているのではないか。通級に配置される教員の数は、5月1日時点の児童生徒数によって決められるが、通級の指導を受ける子どもの数は2学期、3学期と増えていく。国として教員配置の考え方を検討してほしい」と要望した。

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