初めまして。栗山泰幸(くりやまひろゆき)と申します。これまで大阪府と奈良県の中学校で21年間、勤務させていただいてきました。現在は、奈良県の中学校で3年生の担任と社会科の授業を担当しています。また、現場での勤務と並行しながら、名古屋大学大学院で教育心理学の研究を進めています。
拙著『大人も子どももみんなで支え合う 令和の生徒指導』(明治図書、2025)では、これまでの実践と研究を振り返りながら、「大人も子どももみんなで支え合う」をテーマに、これからの生徒指導と教育の在り方についてまとめさせていただきました。この本をもとに、本連載ではこれからの教育に必要なマインドセットを皆さんと一緒にさらに深めていければと思います。
早速ですが、交流分析理論(Berne, 1964)では、「I’m OK, You’re OK」という人生の態度が重視されています。これは「自分も相手も価値のある大切な存在だ」と承認する態度であり、それを支えるのが「ストローク」です。
ストロークとは、相手の存在を認めるあらゆる行為を指します。端的に言えば、「日々の人との関わり」と考えてもよいかもしれません。特に、立場や成果に関係なく、相手の存在そのものをありのままに受け止める「無条件の肯定的ストローク」は、最も大切な関わり方だとされています。
この姿勢は、子どもに対してだけでなく、大人同士の関わりにも欠かせないことです。年齢や役職にとらわれず、誰にでも温かく肯定的に接すること。その積み重ねが「みんなで支え合う風土」を生み出し、全ての人にとって学校が安心して過ごせる居場所になっていくのだと思います。
――実践のポイント――
①笑顔で自分から、気持ちの良いあいさつをしよう
②立場や役割に縛られず、明るく肯定的な関わりを大切にしよう
③相手の話を遮らず、きちんと最後まで聴き合おう
参考文献
Berne, E. (1964). Games People Play. Grove Press.
Harris, T. A. (1967). I’m OK ? You’re OK. Harper & Row.
【プロフィール】
栗山 泰幸(くりやま・ひろゆき) 1981年生まれ。奈良県公立中学校教諭、名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程在籍、教職修士(専門職)。公認心理師、臨床発達心理士、日本スクールカウンセリング推進協議会ガイダンスカウンセラー。2019年度より4年間、生徒指導主事を務め、奈良県中学校生徒指導研究会研究委員、奈良市中学校生徒指導連絡協議会幹事を兼任。この期間に取り組んだ発達支持的生徒指導について実践的研究を進め、日本生徒指導学会大会(2023)で発表を行った。社会科学習を通したアクティブラーナーの育成(2017)、発達支持的生徒指導の具体的実践についての研究(2024)で2度の日教弘教育賞受賞。奈良教育大学学長より奨励賞受賞(2025)。近著に『大人も子どももみんなで支え合う 令和の生徒指導』(明治図書)、モットーは笑顔と拍手、美点凝視。