第7回 勉強嫌いな、あの子にかける言葉かけ

第7回 勉強嫌いな、あの子にかける言葉かけ
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 慶應義塾大学の今井むつみ教授は、『学力喪失』(岩波新書、2024)の終章で、次のように述べています。

 「教育の本当の効果は、その教育を受けた子どもが10年先、20年先にどのような人間になっているかで評価するべきだ。そして、評価の観点でもっとも重要なのは、どういう知識をもっているかというよりも自走した学び手に育ち、やりがいをもって充実した生活を送っているかどうかだ」

 この言葉を読んで、義務教育段階で「テストの点数」に苦しむ子どもたちの顔が脳裏に浮かびました。テストの点数は、あくまで勉強の成果の一部に過ぎません。テストに向けた努力は尊く、その過程で得られた学ぶ力こそが価値あるものです。学校で自律した学びの芽を育むことができれば、10年先、20年先、自らの人生を切り開く行動を起こし、人生を豊かに彩る花を咲かせられるでしょう。

 私たち教師は、教室の中で「テストで何点取れたか」ではなく、その勉強を通して何を学び、どう成長したのかに焦点を当てて言葉をかけることが大切です。そうすることで、子どもは結果に縛られず、前向きに学びに向かっていけます。

 そこで私は、子どもたちが自己採点するテストの場合、点数への言及は極力控えています。「テストの点数は何点だった?」と聞くと、子どもはテストの点数という「結果」に過度に意識を向けてしまうからです。

 代わりに、「テスト勉強を通してどんな力が身に付いたかな?」「今回の結果をどう未来に生かせるかな?」と問い、過程や未来を見据えた言葉をかけます。こうした中長期的な成長を見据えた関わりは、勉強が嫌いな子に「次はやってみよう」という気持ちを生み出します。こうした前向きな循環が積み重なることで、学びは子どもの日常に根付きます。

 テストはあくまで学びの手段の一つ。子どもたちにとって、大きな目的かのように誤解されがちなテストの在り方を柔軟に問い直し、学び続ける教室文化を創っていきましょう。教師の発する言葉が、やがて教室の学習文化そのものになるのです。

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