柔軟な教育課程の事例増やす 文科省が新たな仕組み検討

柔軟な教育課程の事例増やす 文科省が新たな仕組み検討
柔軟な教育課程の事例創出に向けて、新たな仕組みを検討していることを明かした阿部文科相=撮影:藤井孝良
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 次期学習指導要領で柔軟な教育課程を実現する方策として創設が検討されている「調整授業時数制度」について、阿部俊子文科相は9月9日の閣議後会見で、この制度を想定した柔軟な教育課程の事例創出を加速させるため、10月までに新たな仕組みを周知する考えを表明した。全ての都道府県・政令市の一定数の学校で、この仕組みを使った柔軟な教育課程の知見を増やし、次期学習指導要領への移行に際して、各学校の判断でスムーズに調整授業時数制度を活用できるようにする。

 調整授業時数制度は各学校の判断で一部の教科の標準授業時数から一定の時数を減らした分、別の教科などの時数を増やしたり、学校が独自に設定した教科などの時数に充てたりすることができる仕組みとして、次期学習指導要領の方向性を検討している中教審の教育課程企画特別部会で議論されている。減らした分を「裁量的な時間」として、子どもの学習支援や授業改善に直結する組織的な研究・研修に一部を充てることもできる。

 すでに調整授業時数制度の運用に向けた知見を蓄積するため、今年度の研究開発学校のうち9都道府県46校で、柔軟な教育課程が編成・実施されている。9月5日に示された教育課程企画特別部会の論点整理素案では、さらに全ての都道府県・政令市で知見を蓄積するため、来年度は事例創出を加速させるべきだと提言していた。

 これを踏まえ文部科学省では、研究開発学校などとは別に新たな仕組みの創設を検討。来年度以降、全ての都道府県・政令市で一定数の学校がこの仕組みを使って、柔軟な教育課程の編成・実施に取り組めるようにすることをイメージしている。10月中には教育委員会などへ新しい仕組みの周知をする予定。

 阿部文科相は「調整授業時数制度導入後、各学校が創意工夫ある教育課程の編成に具体的なイメージを持って速やかに取り組むことができるよう、全国の教委、学校による知見や事例の蓄積が不可欠と考えている」と強調。「こうした取り組みを迅速に進めながら、全国各地で調整授業時数制度の導入に向けた準備を加速することを通じて、制度導入時には、多様な個性や特性、背景を有する子どもたちを包摂していく柔軟な教育課程編成に、円滑に取り組める環境をしっかり整備していきたい」と説明した。

 

【キーワード】

研究開発学校 学習指導要領の改善に向けた実証的な知見を集めるため、現行の学習指導要領に基づかない教育課程の編成・実施を認め、新しい教育課程や指導方法などの研究開発を行えるようにした制度。

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