イエナプランの学校での実践事例 教育専門メディアが解説

イエナプランの学校での実践事例 教育専門メディアが解説
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 ドイツで発祥し、オランダで普及して他国へと広がっていったイエナプラン教育は、サークル対話などを通じて多様性を認める教育を重視していることや、個別最適化された学習と批判的思考の育成を中心的理念としていることなどが、2020年版学習指導要領の目指す方向性に合っているとして、急速に注目を集めるようになった。この記事では、イエナプランの理念や特徴、日本の学校における導入事例、実践の手法や課題などについて、イエナプラン実践者の談話を交えて詳しく解説する。

1.イエナプランとは何か?

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 イエナプランは、ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが1924年にイエナ大学の附属校で実践を始めた教育だ。ドイツでの普及は見られなかったものの、60年代になってからオランダで注目されるようになった。小学校を中心に各地での実践例が蓄積され、効果が実証されたことから、他国へも広まっていき、日本でも2000年代以降にリヒテルズ直子氏が紹介したことなどをきっかけに普及が始まった。

 当初はフリースクールや幼児教育などでの実践が主だったが、日本で初めてのイエナプランスクール認定校である大日向小学校が19年4月、長野県南佐久郡佐久穂町に開校したのを皮切りに、22年には公立校初のイエナプラン校である広島県福山市立常石ともに学園と、日本の中学校初のイエナプラン校である大日向中学校が開校した。

 イエナプラン教育の特徴は、「子どもの個性や人権を尊重すること」「自立した学び手を育成すること」「対話を重視して共に生きる社会を体現すること」「インクルーシブな考え方に基づき多様な子どもの学びを保障すること」などだ。主なコンセプトには、リヒテルズ直子氏の日本語訳が広く知られる「20の原則」がある。

 この「20の原則」は、大きく「人間について」「社会について」「学校について」の3項目に分けられ、「学校について」の項目では、▽教育活動は、対話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの基本的な活動が、交互にリズミカルにあらわれるという形で行う▽子どもたちがお互いに学び合ったり助け合ったりすることができるように、年齢や発達の程度の違いのある子どもたちを慎重に検討して組み合わせたグループを作る▽子どもが一人でやれる遊びや学習と、グループリーダー(担任教員)が指示したり指導したりする学習とがお互いに補い合うように交互に行う▽学習の基本である「経験」「発見」「探究」などとともに、「ワールドオリエンテーション」という活動が中心的な位置を占める――などの原則が示されている。

 こうした理念の詳細や実践の詳しい特徴は、大日向中学校の開校と同時に校長に就任した長沼豊氏が、教育新聞で10回にわたって執筆した連載記事で読むことができる。

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2.日本の学校における導入事例

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自由進度学習で子どもが主役の学校に

 名古屋市教委が進める教育改革「ナゴヤ・スクール・イノベーション」で、日本イエナプラン教育協会とのコラボ事業として認められた名古屋市立山吹小学校では、「山吹セレクトタイム(YST)」と名付けた自由進度学習の時間を設けている。

 YSTは「児童の数だけ時間割がある」というのが大きな特徴で、国語、算数、理科、社会の4教科について担任が示した「週計画」と「単元進度表」を基に、児童一人一人が自分で時間割を作成する。教師は児童がカスタマイズした時間割をチェックし、それに応じて学習が進められているか、遅れていないか必要に応じてアドバイスするという仕組みだ。この自由進度学習については、現地でのルポや校長の談話を、教育新聞の特集記事で読むことができる。

関連記事:自由進度学習で「個別最適な学び」実践 名古屋・山吹小の挑戦

  

ワールドオリエンテーションとブロックアワーで展開する探究学習

 山吹小学校が導入したYSTは、イエナプランスクール認定校では「ブロックアワー」の名で、個別学習に充てられる時間に該当する。ブロックアワーでの学習はPDCAサイクルで実施されるもので、進めていくうちに、子どもが自分の得意なところや不得意なところ、自分にとって効率的な学び方を知り、自立した学びを確立していくというのが主な狙いだ。

 日本初のイエナプランの中学校である大日向中学校では、ワールドオリエンテーションとブロックアワーで、探究型の学びを展開している。ワールドオリエンテーションではグループや個人で教科横断型の学習を、ブロックアワーではプロジェクト型の学習を中心に実施しており、教師は自分の担当する教科について、異なる学年同士で学習内容をどう組み合わせるかデザインするなど、複雑なカリキュラム・マネジメントを立案している。

 同校は25年度に中等教育学校とした上で移転し、新たに高校生年代の生徒を受け入れることも視野に準備を進めている。同校が展開する学びの現地ルポや、校長が語る開校1年目での課題と展望などについては、教育新聞の特集記事で読むことができる。

関連記事:日本初のイエナプランの中学校 中高一貫教育に挑戦へ

 また、同校が実施した校外学習の模様は、教育新聞のニュース記事で読むことができる。

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 その他、同校の開校と同時に校長に就任した長沼豊氏が、10回にわたって執筆した連載記事も、教育新聞で読むことができる。

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3.イエナプランの実践手法

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異学年の子どもが混合した集団での学び

 イエナプランの大きな特徴の一つは、異年齢集団での学びだ。例えばワールドオリエンテーションは、世界共通のテーマに沿い、異学年の子どもが混合した集団で対話しながら、観察・実験などの経験、発見、探究を通して、教科の壁を超えた知識や思考力を身に付けていく。

 日本で初めて公立小学校としてワールドオリエンテーションを導入した事例など、イエナプランでの実践を中心とした、日本のさまざまな地域における異年齢集団の学びについては、教育新聞の特集記事で読むことができる。

関連記事:【共に学ぶ】異年齢集団 互いの自分らしさを認め合う学びの場

 

円形に座って話し合う「サークル対話」対話

 2020年版学習指導要領の柱となっている対話を、イエナプランでも重視している。イエナプランでの対話は、子どもが円形に座って話し合う「サークル対話」を指し、互いの違いを認め合い、多様性を受け入れる上で重要なコミュニケーションの入口とされる。

 このサークル対話を毎日繰り返したことで、民主的で対話的な教室の文化が醸成されたと語るのは、東京都公立小学校教諭としてイエナプラン教育を研究した後、日本初のイエナプランスクール認定校である大日向小学校でカリキュラムマネージャーを務めた青山光一氏だ。同校におけるイエナプランの実践例や、イエナプランの特徴である個別学習、協働学習、探究学習の概要は、同氏が、教育新聞で10回にわたって執筆した連載記事で読むことができる。

関連記事:【個別・協働・探究で学校が変わる(2)】「サークル対話」が全ての土台

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4.イエナプランの実践者は語る

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 山吹小学校の山吹セレクトタイムを始め、一部の市立小学校の授業にイエナプランを基にしたプログラムを導入したのは、名古屋市の教育改革「ナゴヤ・スクール・イノベーション」の一環だ。改革の陣頭指揮を取る同市の坪田知広教育長は、「山吹小は何ら特別な学校ではない」と述べ、「私学のように子どもを選んでいないし、特別な施設もなく、教員やスタッフも増強していない。改革は校長のリーダーシップと教職員の“やってみよう精神”でできたこと」と説明する。同教育長へのインタビューの詳細や、現地でのルポは、教育新聞の特集記事で読むことができる。

関連記事:進むナゴヤ・スクール・イノベーション 名古屋市・坪田教育長に聞く

 日本の中学校で初めてイエナプランスクール認定校となった大日向中学校で、開校と共に校長を務めた長沼豊氏は24年度、東京都板橋区教育長に就任し、イエナプランの経験を生かして教育の課題に挑んでいる。具体的には「学力向上」「不登校」を喫緊の課題とし、解決の鍵を握るのは授業だとして、イエナプランの考え方を生かしながら自由進度学習を取り入れていくと話す。同教育長へのインタビューの詳細や、現地でのルポは、教育新聞の特集記事で読むことができる。

関連記事:イエナプラン校の経験生かす 東京都板橋区の長沼豊教育長

 公立初のイエナプランスクール認定校として福山市立常石ともに学園を開校したことを始め、広島県の革新的な取り組みで旗手を務めた当時の県教育長の平川理恵氏と、長年にわたって福山市教育長として、教育改革に取り組んだ三好雅章氏。教育新聞ではこの両氏による対談を実施し、オランダのイエナプランスクールを視察した際の概要や、異年齢の学びなど公立学校にイエナプランの理念を取り入れる際の課題などを聞いた。全3回にわたるこの対談の模様は、教育新聞の特集記事で読むことができる。

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