【先輩からのとっておきアドバイス】教師に向いていないかも?

Q

自分で言うのもおかしいですが、成績もよく、子供が好きなので周囲からも教師向きだと言われて育ちました。自然と教師を目指し、その結果、教員採用試験に一発合格。しかし、子供との関係がうまくいかなくなってきた3年目ぐらいから「こんな私は教師に向いていないかも?」という思いが出てきてしまい、前向きに物事を考えることができなくなりました。本当にこんな私が教師を続けていてもいいのでしょうか。

(女性T、教師歴5年目)

A

子供との関係づくりは、教師にとって常に追い求める課題だと思います。T先生の言葉から、誠実なお人柄であることがよく伝わってきます。先生ご自身は、今までどんなことにもご自分が納得できるまで一生懸命努力され、成果を挙げられてきたことでしょう。そして、それが、自信にもつながってきたことと思います。

実は、私も以前同じような思いをしたことがあります。

自分が自分自身に求めてきたことを、全ての子供に対して求めてしまったことで、行き詰まりを感じることになったのです。「個性を大切に」「子供一人一人は成育歴なども異なり、持ち味や価値観が違う」「みんな違って、みんないい」という言葉は、教師になる前から繰り返し聞いていました。自分では、その意味をしっかり理解していたつもりでしたが、子供のためと思い込み、自分の理想や願いを一方的に押し付けていたことに気付きました。

この経験に学んだことは、『寄り添う』ことの真意を十分理解することの大切さです。子供の思いをしっかり聞くこと(傾聴)はむずかしいことですが、まず子供の気持ちを聴こうとする気持ちをもつようにしましょう。先生は何でも聴いてくれると子供が感じることから、信頼関係が生まれます。また、教師が「子供の心の声をしっかり聴く」「子供の実態を的確に捉える」ことができて初めて、真の教育が始まると思います。

T先生。今は苦しいかもしれませんが、子供の思いを受け入れ、理解するよう努めてください。そして、子供の実態をしっかり捉えたうえで、「何を目指すのか」「目の前の子供たちに何を求めていくか」を、もう一度考えてみましょう。また、子供の目線でものを見ようと努めることで、新たな気付きが生まれ、子供との距離を近づけることができます。一人一人の子供のよいところや足りないところを含め、その子自身のありのままを、大きな気持ちで受け入れることが大切です。それによって、T先生自身の人間的な幅・指導の幅も広がってくるはずです。

さらに、一人でがんばり過ぎず、困ったり迷ったりしたときには遠慮せず、周りの先生方に相談するようにしましょう。教師としての対応力は、経験によって学びとることが多いのです。

現在、対応することがむずかしい子供や保護者の増加など、さまざまな問題に対して、『チーム学校』で対応することの重要さが増しています。担任一人で抱え込むのでなく、皆で体制を組んで対応することが不可欠になってきているのです。また、他の先生方の助言により、適切なものの捉え方やよりよい対応の仕方に早く気付いたり、ものごとを客観的・多面的に捉えられるようになったりします。

今、自分の前に立ちはだかる高い壁があるように感じているかもしれませんが、T先生なら、必ず乗り越えられます。そして、その壁を乗り越えたときには、大きな成長を得られると思います。無理し過ぎることなく、じっくり経験を積み重ねていきましょう。

(金子明子・豊橋市立芦原小学校長)