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探究学習において、テーマ設定は重要です。実生活との関連が深く、答えに多様性があり、深掘りできるテーマを選びましょう。この記事では、教員に向けて探究学習のテーマの決め方について解説します。多くの学校で採用されるテーマ例やテーマ設定の際の注意点についても解説しているため、参考にしてください。
目次(Index)
1. 探究学習とは
2. 探究学習の流れ
3. 探究学習においてテーマが重要な理由
4. 探究学習のテーマ設定における3つのポイント
5. 多くの学校で採用されているテーマ例
6. 探究学習のテーマの決め方
7. テーマ設定を成功させるポイント
8. 探究学習の実践上の課題
9. まとめ
探究学習とは、児童生徒自身が課題を見つけ、自分で解決策を発見する力を育む学習です。探究学習を進める際は、教科の枠組みを超えた横断的・総合的な学びが求められます。小学校・中学校では「総合的な学習の時間」を核として、高校では2022年度から実施された学習指導要領から「総合的な探究の時間」を核として、取り組むことが期待されています。高校では、「古典探究」「地理探究」「理数探究」など、さまざまな教科に「探究」という名の付いた科目が新設されるなど、探究学習への取り組みが求められています。
探究学習は、4つのサイクルを繰り返しながら進められます。以下、4つの具体的な流れについて解説します。
探究学習では、最初に解決を目指す課題を設定します。課題の設定は、探究学習において最も重要です。課題は教員が提示するのではなく、児童生徒が自分自身で探します。
小学校・中学校で探究学習を行う場合は、社会問題よりも、児童生徒が困っていることや気になっていることなど、身近な事象や出来事から課題を探せるように、教員がサポートできるとよいでしょう。
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課題を解決するためには、情報の収集が欠かせません。教員は、目的に応じて情報が偏らないように子どもを導きます。また、インターネットや図書館で調べる、インタビューをするなど、情報収集には複数の手段があることをアドバイスしましょう。
情報収集では、学校外部との連携が必要な場合もあります。情報収集の支援提携先が見つからない場合は、教育委員会や自治体に問い合わせたり、文科省のサイト「総合的な学習の時間」応援団のページなどから探したりしてみましょう。
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収集した情報の中には、課題解決に向けて有用なものとそうでないものがあるため、整理が必要です。
課題によっては、数値的なデータを扱うこともあるでしょう。その場合はデジタル端末を活用した分析なども有効です。表計算ソフトなどのICTを有効活用することで、効率的にデータの整理・分析ができます。必要に応じて教員がサポートしてください。
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探究学習の最後には、全体に向けてまとめたことを発表します。そのことを事前に子どもたちに伝えておきましょう。
発表資料の作成に際しては、1人1台端末を有効活用するなどして、分かりやすく伝えることが大事です。発表は、プレゼンテーションにしたり、ポスター発表にしたり、何かしらの作品にしたりするなど、さまざまな表現方法が考えられます。
そして、ただ発表して終わりではなく、他の子どもからも意見やフィードバックをもらうことで、より学びを深めることができます。こうした活動も意識するようにしましょう。
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児童生徒が日常で感じる身近な疑問や課題をもとに当事者意識を持てるテーマを設定できれば、探究学習はスムーズに進められ、子どもは主体的に取り組みます。教員をはじめとする周りの大人がテーマを与えてしまうと、児童生徒の主体性が失われ、自分なりの答えや新しい考えを生み出すことが難しくなります。
探究学習では児童生徒が学びやすく、深い学習が期待できるテーマ選びが欠かせません。ここではテーマ設定における3つのポイントを解説します。
地球規模の問題や社会全体の問題などの大きなテーマよりも、実生活に即した身近なテーマの方が、子どもの意欲を引き出しやすいでしょう。例えば、環境問題を取り上げるとしても、いきなり「地球温暖化」から入るのではなく、地域のごみ問題などから入った方が自分事として捉えやすく、子どもたちは主体的に取り組みます。
実社会の課題の多くは、「正解が一つではない」問いです。子どもたちが一つの正解にたどり着くのではなく、自ら答えを創り出していくことが重要であり、探究学習においてもそうしたテーマを設定する必要があります。
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比較的簡単に解決策が提示できてしまうテーマでは、探究学習に深まりが出ません。そのため、調べれば調べるほど、奥の深さが感じられるようなテーマを設定することが大事です。
探究学習のテーマは、学校によって特色が出ます。ここでは、多くの学校で採用される代表的な3つのテーマを解説します。
自分が住んでいる地域の課題は、子どもたちにとって最も身近なものであり、興味を持ちやすいものです。具体的には、地域のごみ問題や防犯の問題、子どもや老人の居場所づくりなどが、テーマ例として上げられます。課題を解決していく上で、地域の人にインタビューをしたり、同じ地域の他校と連携して取り組んだりするケースもあります。
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SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2030年までに目指すべき17の目標として国際連合が示したものです。多くの学校が取り入れていますが、子どもたちが自分事として取り組むには、17の目標はスケールが大きすぎる側面もあります。そのため、17のゴールから一つを選び、自らの実生活に当てはめた上で、テーマを設定することが大切です。
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探究学習では、子どもたち自身が興味・関心のあるテーマを選ぶことが重要です。テーマを設定する際には、その点を子どもたちにも伝えましょう。また、子どもの興味・関心が学校外まで広がる場合には、大学や企業、官公庁など外部機関と連携することで、より深い学びにつながります。
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探究学習のテーマは、児童生徒自身が決めるのが望ましいですが、発達段階的に難しかったり探究学習に慣れていなかったりする場合は、教員がサポートするケースもあります。
探究学習のテーマ設定は、基本的に子どもの興味・関心に基づき、「子ども主体」で行う方がよいでしょう。ただし、テーマがあまりにも複雑・高度だったり、逆に簡単だったりすると学びが深まらないため、必要に応じて教員がサポートする必要があります。
発達段階的に「子ども主体」でテーマを設定するのが難しかったり、探究学習に慣れていなかったりする場合は、教員がテーマ設定をサポートする必要があります。
その際は教員が一方的にテーマを与えるのではなく、複数のテーマを用意して子どもたちから選ばせたり、子どもからヒアリングをして一緒に決めていったりすることが、主体性を育むた上でも重要です。
探究学習ではテーマ設定が一番重要です。ここではテーマ設定を成功させるポイントを4つ説明します。
子どもによっては、漠然と興味・関心を抱いていても、それを具体的に言語化できないケースもあります。そのため、教員が子どもとの対話を通じて、興味・関心の言語化をサポートする必要があります。
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テーマ設定には、児童生徒が焦らず熟考できるくらい十分な時間をかけることが大切です。時間が短いと、安易に設定したテーマになりやすく、深掘りが困難になったり、期待したような効果が得られなくなったりするなど、探究学習の成果に影響が出てしまいます。
探究学習は答えのない問いに取り組むものであり、最初からうまくいくとは限りません。子どもも教員も、試行錯誤を繰り返すことで、より効果的な探究学習ができるようになっていきます。
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日頃、一斉講義型の授業をしている教員は、つい教えたくなりますが、探究学習は子どもが主体の学びです。テーマ設定においても、教員はサポート役に徹することが重要です。
効果的に実践できれば、子どもたちに実社会で役立つ力が身に付く探究学習ですが、現実には課題もあります。ここでは学校現場における3つの課題について説明します。
教科書を教えればいい日頃の授業とは違い、探究学習は一から計画して実施しなければならないため、準備に時間がかかります。学校現場の多忙化が著しい中、効果があるとは分かっていても、探究学習に踏み出せない教員も少なくありません。
探究学習においては、学校の外に出て情報収集をすることも多々あります。ただ、学校を取り巻く地域に、情報収集をする上で必要なリソースがないケースもあります。そうした場合は、オンラインで他地域や企業などとつながるなどして、探究学習を進めていく必要があります。
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子どもはもちろん、多くの教員は自分自身が本格的な探究学習を経験したことがないため、実践のイメージがつかみづらいという課題があります。そのため、中には調べ学習の延長のような実践や、一つの正解を求めて満足する「探究ごっこ」的な実践にとどまっているような事例も散見されます。
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探究学習のテーマは、自分事として考えられ、答えに多様性があり、深掘りできることが重要です。児童生徒自身が決めるのが理想ですが、導入時は教員がテーマの設定を支援する方法もあります。その際も、児童生徒自身が興味・関心のあるテーマを設定できるよう、適切なサポートを行いましょう。