「冬本番」を前に 対策・対処法の確認を!【感染症対策特集】


インフルエンザ、ノロウイルスなど、感染症が流行しやすい学校現場――。冬に向かうこの時期は、感染症対策が急務となっている。そこで感染症の基礎知識と予防・対策に焦点を当て、特集をまとめた。国の取り組みや対策方針を紹介するほか、専門家がウイルスや危機管理の基礎知識を解説。学校現場で取り組むべき対策について、最前線で働く養護教諭の事例も紹介する。

学校全体で取り組む感染症予防 教職員、児童の意識高める
富山県高岡市立野村小学校養護教諭 網 美智代

ブラックライトを当て汚れの残りやすい部分を確認

1. はじめに

今年は、インフルエンザの流行を全国的に早くから耳にします。本県でもすでにインフルエンザ様疾患の集団発生で措置をとった学校があります。また、これから流行するノロウイルスは、感染力が強く、感染経路も①飛沫(ひまつ)感染②接触感染③経口感染――と多彩で、気を付けなければならない感染症の一つです。

本校では、学校保健目標を「自分の健康に関心をもち、心と体の健康づくりを主体的に実践する子供を育てる」として健康教育を進めています。特に感染症が流行するこの時期は、子供たちの健康管理に細心の注意を払い、感染症予防の強化のために以下の取り組みを行っています。

2. 児童の健康状態の把握

毎朝、学級担任が児童の遅刻や欠席の人数と理由を把握し、児童の健康状態をチェックします。養護教諭は児童と教職員を含めた学校全体の欠席状況や罹患(りかん)状況を集約し、欠席者の増加や急性呼吸器症状や下痢・腹痛、吐き気等の訴えが多数見られる学級を把握します。その学級に出向き児童の健康状態を詳しく確認することもあります。感染症は、早期発見が非常に重要なので、家庭において登校前の子供の健康状態に注意するよう、保健だより等でお願いをしています。

3. 養護教諭による保健教育の充実

児童が感染症の予防について興味関心を持ち、正しく理解し、日常生活において実践できるように学習内容を工夫しています。

養護教諭と担任で行っている3年生の保健学習「毎日の生活と健康(体の清潔)」では、体や身の回りの清潔と、健康との関わりについて考える学習をします。ブラックライトを使って正しい手洗いの仕方を実習しています。正しい手洗いの仕方を身に付けるため、授業後に「手洗いすっきりカード」を使用して1週間自分の手洗いをチェックするようにしています。

4. 児童保健委員会等の活動による免疫力・抵抗力の向上

病気に負けない健康な体をつくるために、児童が意欲的に体力づくりに取り組めるよう工夫をしています。

学年別で走る「いわせのランニング大会」や運動委員会企画の異学年グループで運動する「団別わくわくタイム」「なわとび教室」を実施しています。また、保健委員が学級を回って手洗いの仕方を教えに行くなど全校児童に風邪予防について働き掛けています。

5. 教職員の危機管理意識の向上
授業の板書

学校内の感染症対策では、教職員の危機管理意識を向上させることも重要だと考えます。養護教諭がコーディネーターとなり、管理職と教職員が果たすべき役割を明確にし、学校医と連携して組織的に対応することが大切です。

全教職員が協力して取り組めるように年に1回、研修として実習を行っています。給食の準備をする給食当番が、腹痛や下痢等の体調不良がある場合は、当番を交代するなどの感染予防を徹底しています。また、嘔吐(おうと)した児童や腹痛や吐き気の訴えが多数見られる学級の食器は学校栄養士と相談の上、1週間程度、塩素消毒を行うなど積極的に感染症の拡大防止に努めています。吐瀉(としゃ)物処理セットと対応マニュアルは保健室と各学級に常備し、児童の突然の嘔吐にすぐに対応できるようにしています。

6. 地域、関係機関との連携

高岡市では、年間感染症対策としてリアルタイムな情報共有を可能にする日本学校保健会の「学校等欠席者・感染症情報収集システム」を利用して、市内の感染症の情報を早期に把握し対応に努めています。

教育委員会や厚生センター、中学校校区の小中学校と連携を取り、地域の発生状況の把握や感染情報を毎日チェックします。感染症による出席停止者や学級学年閉鎖等の措置をとった場合は、学校医等に自動的にメールで連絡が行き、連携を図っています。

(全国養護教諭連絡協議会役員)

予防対策、初期段階での対処法 インフルエンザ、ノロウイルスなど
川崎市健康安全研究所所長 岡部 信彦

〇症状の違いなどを押さえる

冬になると流行するインフルエンザとノロウイルス感染症。しかし、あまり同時に大流行することはありません。11月になるとノロウイルスが急増し、12月中旬にピークを迎えて年内に少なくなってきますが、それに代わるようにインフルエンザの流行が始まります。年を越えるとインフルエンザは大流行となりますが、学年末頃になると急速に減少します。一方ノロウイルスは、いったん減少するものの、だらだらと春先から初夏まで流行が続きます。

インフルエンザは呼吸器感染症なので、高熱、咳(せき)、のどの痛み、くしゃみなどの症状がありますが、腰や筋肉の痛み、だるさなど全身症状が強いことも珍しくありません。嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの腹部の症状を伴うこともあります。

一方、ノロウイルス感染症は、かなり強い嘔吐・下痢が突然現れ、次いで熱が出てくることもあります。嘔吐・下痢は、回数も多く、洗面所や手洗いに間に合わず、その場で吐いてしまったり、手洗いからしばらく出てこられなくなったり、ということもあります。咳やくしゃみなどの呼吸器の症状はあまりありません。

〇流行のまん延を防ぐための出席停止

インフルエンザに感染したのちには免疫ができますが、ウイルスは毎年のように変化を続けているので、違ったタイプのインフルエンザウイルスの感染を受け、何回もインフルエンザにかかることはよくあります。

ノロウイルスも感染によって腸管の免疫ができますが、その力は呼吸器の免疫より弱く、軽く繰り返すことがよくあります。ところが、ノロウイルスも、インフルエンザほど毎年のようにではありませんが変化を繰り返しており、せっかく免疫ができて軽くすむようになっても、新たなタイプのノロウイルスが現れて再び激しい嘔吐と下痢に見舞われます。

インフルエンザは、自然経過では解熱するまでに4~5日かかりますが、抗インフルエンザウイルス薬を使うと発熱期間の短縮がみられます。ただし、薬を使って早く解熱した場合でも、薬を使わずに自然に回復した場合でも、他の人へうつさなくなるには発熱した日から約1週間はかかるので、発症した後(発熱の翌日を1日目として)5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで学校などは出席停止となります(幼児にあっては、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日を経過するまで)。本人の回復の確認だけではなく、集団生活の中で感染の広がりを防ぐ、という意味があります。

ノロウイルスは、症状が現れるのも突然ですが、回復するのも突然で、2~4日の経過でけろっと治ります。ただし回復してその後1~2週間、長いと4週間ほどは便からウイルスが排せつされるので、長い間他の人にうつす可能性があります。かといって、2~4週間元気なままお休み、というわけにはいかないので、回復すれば登校等は可能になりますが、排便を始末したのちによく手を洗うことが、感染予防上重要になります。

〇マスクの着用、手洗いを徹底

日常生活の中での感染症の予防の基本はマスクと手洗いです。

インフルエンザは、咳やくしゃみとともに飛び出る「しぶき」などの中に含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫(ひまつ)感染が中心なるので、マスクは予防上重要です。感染を防ぐ役割ももちろんありますが、インフルエンザらしき症状が出た人や解熱して間もない人が咳などとともにウイルスをまき散らさないためにマスクをつけてくれるほうが効果的です(エチケットマスク)。手を洗うことも、長い目で見ると、呼吸器感染症全体を減少させる効果があります。

ノロウイルスは、食材(特にカキなどの二枚貝類)や便からの感染が中心なので、食材の調理、調理の前後の手洗い、包丁やまな板などの調理器具の洗浄消毒(熱湯や塩素系消毒剤)、そして排便後や便の始末をしたときの手洗いが重要です。吐物にもウイルスは大量に含まれています。この始末も学校などのように集団で人がいるところではマスク、手袋、ガウン(ビニールエプロンなど)をつけて掃除をしてほしいものです。

また吐物や便などが乾燥し、そこに残っていたノロウイルスがほこりと共に飛び散り、広い範囲に感染が広がることもあるので(塵埃(じんあい)感染)、床などに残された吐物や便は速やかにふき取り、塩素系消毒剤で消毒しておくことが重要です。なお、インフルエンザウイルスには消毒用アルコールが有効ですが、ノロウイルスへの効果は落ちるので、できるだけ流水で洗い流す、熱湯で消毒する、塩素系消毒剤を(適切な濃度で)使用することなどが大切です。

感染症の拡大を防ぐ 学校環境衛生に配慮を
文部科学省初等中等教育局 健康教育・食育課健康教育調査官 小出 彰宏

〇感染経路の遮断が重要

今年もインフルエンザ様疾患の発生により学級閉鎖や学年閉鎖が行われたとの報告が上がってきている。インフルエンザやノロウイルスなどの感染症の発生には、①その原因となる病原体の存在②病原体が宿主(ヒト)に伝播(でんぱ)する感染経路③病原体の伝播を受けた宿主(ヒト)に感受性があること――が必要となる。特に、学校のような児童生徒等が集団生活を営む場では、感染経路を遮断することが感染症を拡大させないためには重要である。

感染経路としては、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染、経口感染がある。「空気感染」は、感染している人が咳(せき)やくしゃみ、会話をした際に、口や鼻から飛散した病原体がエアロゾル(空気中に浮遊する病原体を含む粒子)化し、感染性を保ったまま空気の流れによって拡散することで、同じ空間にいる人がそれを吸い込んで感染する。「飛沫(ひまつ)感染」は感染している人が咳(せき)やくしゃみをした際に、口や鼻から病原体が多く含まれた小さな水滴が放出され、それを近くにいる人が吸い込むと感染する。「接触感染」は、感染している人や物に触れることにより感染するが、通常、病原体の付着した手で口、鼻、目を触ることによって病原体が体内に侵入して感染が成立する。「経口感染」は、汚染された食物や手を介して口に入った物などからの感染であり、例えばノロウイルスや腸管出血性大腸菌など、便中に排出される病原体が、便器やトイレのドアノブを触った手を通して経口感染する。

そのため、感染経路を遮断するためには、手洗い、咳・くしゃみの対応、吐物(とぶつ)・下痢などの対応および清掃などが大切である。手洗いや咳・くしゃみの対応は、児童生徒等が適切な方法を身に付けなければ、感染の拡大を防ぐことはできない。したがって、養護教諭が学校医や学校薬剤師と協力し、児童生徒等に対して適切に指導することが望まれる。吐物・下痢などの対応および清掃については、教職員がそれらの方法を正しく理解していなければならない。

〇教室は十分な換気を

さらに、冬の教室は、換気が十分に行われず、空気も乾燥していることから、感染しやすい環境になっている。したがって、教室の窓を開け、新鮮な空気を取り込むことが大切である。

本年3月30日に学校環境衛生基準が一部改正され、温度の基準が「10℃以上30℃以下が望ましい」から「17℃以上28℃以下が望ましい」に変更された。温度の基準の意図を曲解し、温度の維持を理由に換気をおろそかにしてはいけない。温度の基準は、「望ましい」と規定されているように、おおむねその基準を順守することが望ましいとされているものである。

学校環境衛生基準では、空気の汚れの指標として二酸化炭素濃度を測定することになっており、「1500ppm以下であることが望ましい」と規定されている。二酸化炭素濃度は、在室する児童生徒等の呼吸等により上昇し、窓を閉め切った教室では基準値を超えてしまうため、休み時間のみならず授業中にも、窓の開放や換気扇等により換気を行うようにする。なお、その際、外側の窓と廊下側の上部の窓(欄間)は対角線上に開けると換気がスムーズに行われる。

学校環境衛生基準に基づく環境衛生検査は、主に学校薬剤師が実施していることから、換気についても学校薬剤師に相談し、適切に行っていただきたい。また、学校環境衛生活動については、「学校環境衛生管理マニュアル(2018年度改訂版)」が参考となる。これは本年、学校環境衛生基準の一部改正に伴い全面改訂され、今夏、各学校に1部配布されている。また、文科省のホームページで閲覧およびダウンロードも可能であるので、ぜひ活用していただきたい。